ダイヤモンドの特性

ダイヤモンドは硬度10なのになぜ割れる?スマホ画面と同じ「衝撃に弱い」理由

「天然に産出する物質としては最も硬い部類に属する」とされるダイヤモンド。
モース硬度で最高の10と聞くと、「絶対に割れない」と思ってしまいがちですが、実はそうではありません。

 

本記事では、鉱物の硬さ指標「モース硬度」を軸に、


傷への強さと、割れにくさ(耐衝撃性・靭性)は別物であること


そしてダイヤモンドが割れる理由に関わる「へき開」について解説します。

1. なぜ硬度10でも割れる?スマホ画面と共通する「3つの理由」

結論をひと言で言うと、こうなります。

 


モース硬度(傷への強さ)=割れにくさ(衝撃への強さ)ではありません

 

理由は次の3つです。

  • 理由①:モース硬度は“ひっかき傷”の強さを表すもの
  • 理由②:ダイヤモンドには割れが走りやすい方向(へき開)がある
  • 理由③:衝撃が一点に集中すると、欠けや割れが起きやすい(角・稜線が弱点になりやすい)

スマホ画面の強化ガラスと同様、表面は硬くても、衝撃の入り方次第で割れる

これが、硬度10でも割れる理由です。

2. そもそも「硬さ」とは?—モース硬度と割れにくさは別もの

「硬い=割れない」と思われがちですが、両者は別の性質です。

 

  • モース硬度における硬さ:ひっかき傷がつきにくいか
  • 割れにくさ(耐衝撃性・靭性):衝撃や力で欠けやヒビが起きにくいか

 

ダイヤモンドは傷には非常に強い一方で、衝撃の入り方によっては欠けることがあります。

つまり、硬い=絶対に割れない、ではありません。

3. ひっかき傷でわかる!鉱物の硬さを測るモース硬度

鉱物の硬さ指標として一般的に使われるのがモース硬度です。

硬い鉱物が柔らかい鉱物をひっかいて傷をつけられるかどうかで、

相対的な硬さを並べた尺度です。


重要なのは、モース硬度は序数(順番)だという点。

たとえば「10と9の差」が「8と7の差」と同じ量を意味するわけではありません。

 

この尺度は、ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースによって1812年に提唱されました。モースはその後、1822年〜1824年に『Grund-Riss der Mineralogie』を出版しています。

※画像1:「フリードリッヒ・モース」/PD

代表的な鉱物のモース硬度は次の通りです。
数字が大きいほど、より硬いことを意味しています。

※画像2:「モース硬度スケール」/©GIA(出典:GIA 4Cs Blog)

モース硬度 :代表的な鉱物・物質
1      タルク(滑石)
2      石膏
3      カルサイト(方解石)
4      フルオライト(蛍石)
5      アパタイト
6      長石(正長石など)
7      石英(クォーツ)
8      トパーズ
9      コランダム(ルビー・サファイア)
10      ダイヤモンド

4. 身近な物質と比べて理解するモース硬度

モース硬度は「相手をひっかいて傷をつけられるか」を比べる尺度です。
身近な物と比べると、直感的に理解しやすくなります。

※ここで分かるのは 傷への強さであって、叩いたときの割れにくさ ではありません。

身近な物の代表的な目安

  • 人体の爪(2.5):石膏(2)より少し硬いが、方解石(3)には負ける
  • 銅貨(3〜3.5):爪では傷が付かず、柔らかい素材には跡が残ることも
  • ガラス(約5.5):銅貨に傷をつけられるが、石英(7)には負ける
  • スチール釘(約6.5):材質や熱処理で差が出る

※硬貨は国・年式で材質が異なります。釘なども材質や熱処理で差が出ます。

4-1. ダイヤモンド vs 日常素材:勝つのはどっち?

ダイヤモンド(モース硬度10)は、鉄(純鉄は目安4前後)やガラス(約5.5)など多くの物質に対して、「傷」では圧倒的に強いのが基本です。
一方で、鉄や硬い工具で「叩く」「角に一点集中で当てる」などの条件が重なると、ダイヤモンド側が欠けることがあります。

 

  • 傷の勝負(ひっかき):ダイヤモンドが圧倒的に強い
  • 衝撃の勝負(落とす・叩く・角で当てる):衝撃の入り方次第で、ダイヤモンドが欠けることがある

5. 宝石職人が使う「へき開」の秘密

「へき開(劈開)」とは、結晶構造をもつ鉱物に見られる“割れ方のクセ”のことです。
ダイヤモンドも結晶なので、力の向きや当たり方が合うと、欠けたりヒビが入ったりすることがあります。

 

一方で、へき開は弱点であると同時に、加工現場では原石の分割(クリービング/ソーイング)や研磨方向の判断に役立つ重要な手がかりでもあります。

ブリリアントカットのような多面体を作る主役はへき開そのものではなく研磨技術ですが、

へき開の方向を読み違えると欠けのリスクが高まるため、職人は結晶の特徴を見極めながら工程を組み立てます。

6. 余談:凍ったあずきバーは“硬度10”?—ネットの定番ネタを整理

ネット上で「凍ったあずきバーはダイヤモンド並み」、「サファイアより硬い」といった話題を見かけます。
たしかに“とても硬い”のは実感として分かるのですが、宝石と同じ土俵で硬度を断定するのは難しいところがあります。

 

整理していきますと、

  • 過去に刃物メーカーがロックウェル硬さ試験で測定を試みたところ、数値が安定せず「測定不能」とされている(途中で非常に大きな値が一瞬表示された、という言及はあるが公式記録とはいえない)
  • ロックウェル硬さは本来、金属などの一定条件下での試験に向く尺度で、氷菓のように圧力や温度で状態が変化する対象は、試験条件自体が成立しにくい
  • モース硬度は鉱物を基準にした相対尺度。爪や金属など“身近な物”で目安として語られることもあるが、氷菓をモース硬度で語るのは不適切
  • ロックウェル硬さとモース硬度では、測定の尺度や方法が異なるので注意する
    ※ロックウェル硬さ:硬さを押し込み(indentation)で測る方式

 

このため本記事では、

「すごく硬く感じることはあるけれど、モース硬度で言い切るのは避けよう」

という整理にしておきます。
(※食べるときは歯を痛めないよう、そこだけ注意してくださいね)

7. まとめ:硬いけれどデリケート—ダイヤモンドと長く付き合うために

  • ダイヤモンドはモース硬度10=傷に非常に強い
  • ただし、割れにくさ(耐衝撃性・靭性)とは別の性質
  • へき開があり、衝撃が一点に集中すると欠けることがある

つまり、
「モース硬度10=無敵」ではありません。

日常では、

「家事・運動時は外す」「ぶつけない」「石留めチェックを年1回する」ことで、リスクは大きく下げられます。

ダイヤモンドの特性を理解し、
硬いけれどデリケートな宝石として、末永く付き合っていきましょう。

画像出典

・画像1:Josef Kriehuber(1832)『Friedrich Mohs(リトグラフ)』| パブリックドメイン|出典:Wikimedia Commons(スキャン提供:Peter Geymayer)|ファイル

 

・画像2:GIA 『Mohs scale(モース硬度スケール)』| ©GIA |出典:GIA 4Cs Blog

完全予約制

パーソナルダイアモンド体験

あなただけにフィットする
オンリーワンのダイアモンドを見つけましょう

ご予約はこちら